ボーティエ・ド・コルタ 



世界の偉大なマジシャンを紹介していくこのコーナー、第二回はマジック発明家ド・コルタです。
さて、おそらくド・コルタと聞いてこの人が誰なのか知っている人はなかなかいないんじゃないかと思います。が、この人の発明したマジックは誰でも知っています。というかむしろ使っている人も多いと思います。
たとえばあれですよ、手にしたボールが増えたり減ったり…そう!四つ玉。四つ玉の例のギミックを発明したのが彼、ド・コルタさんです。
それからあれも、手からぽろぽろ出現するそれ、ミリオンフラワー。いわゆる「バネ花」。それもド・コルタさんの発明ですよ。
きわめつけはあれです。カードマニュピレーターの皆さんはもちろん使ってますよね〜?トランプしか使ってないって?いやいや、噴水カードのことです。噴水カードの原型も彼の発明です。
どうですか?すごいでしょう。最初に言ったとおり、ボーティエ・ド・コルタはマジック史にその名を残す百年以上前の偉大なクリエイターだったんです。とはいえ、これらの道具も今のものとは多少違いがあります。主に演出面。四つ玉で使われる例のギミック自体はこのとき発明されたものですが当時はまだ「四つ玉」というルーティーンの形ではなく、単に一個の玉が二個に増えるというマジックだったようです。ミリオンフラワーも今のスタンダードな使い方のように手にたくさんパームしてひとつずつ湧き出してくるというものではなく、紙をコーンの形に巻いたものの中からたくさんの花が現れるという使い方でした。これは今のように音楽をかけながら無言で演技するというスタイルが主流ではなかったからだと思われます。
噴水カードに関しては機構も演出も今とは違います。だって百年も前にあの仕掛けは作れないですし…さすがにね。使い方もどっちかというと今でいうクロースアップやサロンマジック的な使い方で、一組のカードをコップに入れると噴水のように飛び散って観客が選んだカードだけがコップに残っている、というマジックでした。
あ、でも一つ今とほとんど変わらないものがありました。ランス・バートンもディメールも使っている、小さな鳥籠の消失。うちのサークルでもちょっと前に誰かが使っていましたね。あれはド・コルタが発明して百年以上たった今でもほとんど形を変えずに世界中のマジシャンに愛用されている道具です。
ド・コルタが発明したマジック・原理は他にもたくさんあり、さいころがどんどん大きくなる「グローイング・ダイス」や手の中で消えたハンカチが皿の下から現れる「皿とハンカチ」などがあります。
ちなみにマジックで初めてシルクのハンカチを使ったのは彼だともいわれています。

そんな彼のマジックでも特に有名なのがヴァニッシング・レディの名で知られる人体消失マジックです。極めてシンプル、鮮やか。
まず、舞台の上に新聞紙を敷きます。そしてその上に椅子を一脚起きます。なぜ新聞紙を敷くかというと、ステージ上に穴が空いているのではないかという疑いをなくすためです。その椅子に助手の女性が座ります。ここでマジシャンは全身をすっぽり覆ってしまう大きな布を女性にかけます。布の上からでもまだ女性がいるのがわかります。次の瞬間、マジシャンが布を取り払うと、女性は完全に消失して舞台には空になった椅子だけが残っています。
現象もシンプルなら種もシンプル。興味のある人は松田道弘著「奇術のたのしみ」を読んでみてください。

さて、このド・コルタはマジシャンというよりはもっぱら発明家で、演出や見せ方はまるで考えませんでした。「手品はタネさえ優れていれば見せ方なんか問題じゃない」というのが彼の考えです。当然、彼の演技は大衆受けせず、あまりお金になりませんでした。
とはいえ、彼の独創性自体はとてもすごいものでした。だからこそ、彼のアイディアに刺激されたたくさんのマジシャンがネタを発展させ、現在まで残るすばらしいマジックとして伝わっているのです。
いま、四つ玉やミリオンフラワーを自分なりに工夫して演じているあなたも、ド・コルタに始まる歴代のマジシャンたちの創意工夫の歴史に連なっているのです。そう考えるとなんだかわくわくしてきませんか?


Buatier De Kolta
(1845-1903)










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